種麹からの種を継ぐ~種麹をつくる

麹つくりの「出麹」のタイミングを5~7日間 引き延ばし、3日目以降さらに保温と保湿を続けると 胞子がどんどん成長していきます。

胞子の色は濃くな り、数も増えていきます。

胞子形成の最適温度は34 ~36°Cです。あまりに胞子が成長すると麹としては 使いにくいのですが、これは胞子なので種麹として 使えます。

こうした麹から胞子をとって種を継ぐことは、もとも との日本の農村、味噌蔵や醤油蔵でも行なわれてい ました。

西欧で自家製のサワードゥ(パン種)やチー ズの菌を継いでいくように、麹も昔はおおらかに種菌 を継いでいたのです。

種麹をつくるときには、通常の麹つくりとは違う認 識で麹を育てます。

通常の麹つくりは「酵素を生産する」ことが目的ですが、種麹つくりは、「胞子を生産する」ことが目的です。同時に衛生面に気を配り、 雑菌の混入を極力防がなければなりません。

普通に麹をつくり、その一部を種にするという方法では、す ぐに雑菌だらけの種麹になってしまいます。

容器や道具は完全に熱湯殺菌したものを用意し、初めの蒸し米が60°C以上の熱いときに原料の3%以 上の「木灰」を加えて強アルカリ環境の培地をつくり、 種切りをして、温度34~36°C、湿度70~90%の環 境を維持して8~10日間、麹の培養を続けます。

そこに次世代の胞子がつき、それを無風状態で乾燥さ せればその胞子を種麹として使えます。完全に乾燥させて密閉袋に入れれば1年以上、冷凍すればさらに長く保存できます。

カビの胞子は、基本的には植物の種子のような扱いで保存ができます。

その胞子を蒸し米に振りかければ、また麹つくりを 始められます。

ただこの胞子を種継ぎし続けることは、 基本的にはオススメしません。

なぜなら世代交代を 経るうちにどんどん本来の性質は変わっていき、野生のカビ菌とも混ざっていくからです。

すると常にそ の菌が安全かどうか?という点に注意を払う必要が出てきます。

家庭で種継ぎしたものは、基本的には 最初の種とは全く違うものになっていることを認識しておきましょう。

だから、できあがった酒や味噌の味 や香りが変わってきたときには種類メーカーのつくる、 「純粋な種麹を新たに使うことをオススメします。

メー カーの種麹を使ったほうが、食品の安全と品質は維持しやすいです。

暮らしの中で育まれた発酵文化を知るという知識と 技術の継承という側面では、種継ぎのことも知ってお いたほうがよいと僕は考えています。

それも踏まえつ つ、種麹を純粋に500年以上も守り伝えて、発酵醸造文化を支えてきた種麹メーカーをリスペクトしています。

そして味や酵素量、その品質の安定、安全面はやはり種麹メーカーのほうが優れています。

農村部で伝承されてきた民間の麹つくり、蔵の中で専門家の技術として発達・洗練されてきた醸造業界の麹づくり。

その二つは相互に補完しあい、二つとも日本 の発酵文化において大切な宝物です。

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